兵庫・淡路島で唯一入院施設を持ち最新設備による眼科治療・手術のできる病院 溝上眼科のブログです。

院内勉強会(点眼薬の保存剤について)

2018年12月12日(水) 千寿製薬による『点眼薬の保存剤が目に与える影響について』の勉強会がありました。

保存剤は、様々な点眼薬に使用されています。繰り返し使用する点眼剤にとって必要な添加物である一方、保存剤による角膜上皮障害やアレルギーなどが懸念されています。

今日は、多くの点眼剤に含有されている保存剤、ベンザルコニウム塩化物について詳しくお話を聞くことができました。

ベンザルコニウム塩化物は、【逆性せっけん】として知られています。
緑内障治療点眼剤の約8割に含有されています。細菌の細胞膜のタンパク質を変性させることによって殺菌力を発揮します。保存剤としての効果は強力で、点眼剤に細菌やカビが繁殖しないように必要な添加物です。
しかし、ベンザルコニウムは細菌の細胞膜だけでなく、角膜の細胞膜にも作用し、角膜上皮障害を引き起こすことがあります。

角膜が健康な若くて元気な人では、保存剤として添加されているベンザルコニウムの濃度では、問題を起こすことはありません。
ベンザルコニウムの濃度が高い場合や、点眼回数や本数が多い場合、点眼期間が長い場合、ドライアイや角膜がもともと弱い人などの条件が重なり角膜上皮障害につながります。ベンザルコニウムで角膜が傷むと、点状表層角膜炎といって角膜を中心に点々と傷がつきます。
ドライアイによるものでは、結膜を中心に傷が出現するため区別できます。
そのため、傷の原因をしっかり区別して治療することが必要となります。

ベンザルコニウムは、重要な添加物である一方、眼表面への影響もあるため、各製薬会社により様々な工夫が行われています。

<保存剤フリー>
保存剤が全く使われていないのが利点ですが、使用中に点眼瓶が細菌で汚染される危険があります。最近では、容器に工夫されている点眼剤もあります。

ユニットドーズ製剤

1回使い切りの点眼剤。容器の頭部を開封した後、片眼もしくは両眼に1滴ずつ点眼し、残液は破棄するという正しい使い方をすれば汚染が起きることはない。欠点として、指先の不自由な患者さんには使いにくい。割高で金銭的負担が大きい。

フィルター内蔵製剤

ノズル部分に特殊なフィルターを組み込んだ構造であり、汚染されにくい容器。
反復点眼も可能。欠点として、点眼瓶が固く、ご高齢の方からさしにくいという意見もあるそうです。

<保存剤濃度を薄くする>
角膜上皮障害を少なくするため、ベンザルコニウムの濃度を薄くする傾向があります。
望ましいことですが、一方で殺菌力は悪くなります。1か月使った点眼剤には高率で細菌が見つかります。開封後は、1か月で破棄するという原則をしっかり守って使用する必要があります。

点眼剤の添加物について、明らかに悪影響があるものを使い続けたくはありません。
製薬会社さんの最新の技術により、ご高齢の方にも使いやすい容器、そして安心して使える点眼剤を日々、研究・開発されているということを学びました。

受付スタッフ S